「同じ会社ですので、あいさつはよくする先輩がいます。 でもほとんど話をしたことのないのに、帰りの電車が一緒になりました。 声をかけられるのですが、何を話したらいいのかわからず、気まずい思いをすることがあります。 どうしたらいいでしょうか?」 |
こんな悩みをいただきました。
ではお答えしましょう。
まず、
「何を話したらいいのかわからない」
という質問が間違っています。
何を話すか?
そこに意識が向いているということは、次の様な深層心理が隠れている証拠です。
・低く見られたくない。
・舐められたくない。
・つまらない人間だと思われたくない
または、
・気の利いたことを話したい
・自分の優秀さをアピールしたい
・デキる奴だと思われたい
・相手に「へー!」とか「ほー!」とか言ってもらいたい
つまり、これらの行動は、身長を高く見せるために上げ底の靴を履くようなものです。
実力のなさを、実力があるように見せようという心理です。
これが、雑談ベタな人に共通しています。
コミュニケーションが苦手だとか、雑談が苦手、という悩みを持つ人は、実はプライドが高い人なんです。
人前で恥をかくことが極端に嫌いです。
と言う私も、心理を学ぶまでは、エネルギーをムダに浪費していました。
・人にバカにされないようにしよう
・よく見せよう
・相手に嫌われないようにしよう
と、頭の中はいつも他者評価にエネルギーを向けていましたから。
では、どうしたらいいのでしょうか?
その答えはとても簡単です。
「自分が何を話したらいいのか?」
という質問をやめるのです。
「相手に何をしゃべらせるのか?」
に意識をシフトすればいいのです。
自分の自己重要感を満たそうとするのではなく、
相手の自己重要感を先に満たすのです。
■相手にしゃべらせる3つの質問
①うまくいっている理由を質問をする
相手の口をなめらかにするひとつの方法として、相手の自慢話を引き出すことです。
相手を持ち上げるには「舎弟ぼめ」の精神が大事です。
「アニキ!すごいっすね!」
ポイントは、自分が相手の舎弟になったつもりでほめるのです。
ですから舎弟ぼめと呼んでいます(笑)
例えば、それほど親しく話をしたことがない、隣の部署の課長と電車がいっしょになってしまった場合。
「◯◯課長はいつもすごい成績ですね!」
このようにストレートにほめるだけだと、次のように否定されることがあります。
「そんなことないよ、オレより売れてる人もいるし、3ヶ月前は目標未達成だったし、キミの部署の課長のほうが、よっぽどいい成績じゃないか」
せっかくほめても全力で否定する人も多いです。
そこで、それを防ぐほめ方をマスターしましょう。
ただほめるだけではなく、質問を組み合わせるのです。
ほめてから、さらにうまくいっている理由を質問するのが上級テクニックです。
「課長は、いつも営業成績がすばらしいですけど、なんでいつも成績が良いんですか?」
このように、「なんで、うまくいっているんですか?」と、ほめたあとに、その理由を質問します。
すると、相手の意識は、「営業成績がすばらしい」という言葉よりも、「成績がいい理由は?」という質問に意識が向かいます。
ほめ言葉はそのまま受け取ってもらえて、「そうだな〜、いつもていねいに説明するようにしてるよ」などと、質問に答えてくれやすくなります。
さらにほめてくれたあなたに対する印象度もアップします。
何よりもノウハウやスキルを教えていただけるチャンスが広がります。
②悩み相談をする
悩み相談をして、アドバイスをもらうというのは、
・相手と親密な関係が築ける
・とても有効なアドバイスがもらえる
・応援者になってもらえる可能性が広がる
などなど、
一石三鳥くらいの有効な方法です。
ただし、相談内容には注意が必要です。
上司や同僚の批判につながりそうな相談をすると、回り回って本人に伝わってしまうことがあります。
私の知人の話です。
入社して半年目に、隣の部署から声をかけられました。
「どうだ、仕事は慣れたか?」
「はい・・・、でも、仕事がけっこうきつくて、まだまだ慣れないです・・・」
「そうか、大変だけどがんばれよ」
「はい、ありがとうございます」
たったこれだけの何気ない雑談でしたが、ここから彼の悲劇は始まりました。
「おい、ちょっとこい!」
翌日、上司に呼び出されて、何事かと思ったら、
「お前、隣の課長に、『今の職場はキツくてつらい』とか言ったらしいな!
今まで半年、面倒見てきたというのに、恩を仇で返すとは、お前はなんてひどい奴だ!
だったら、オレはもう面倒を見ない!勝手にやれ!」
そこからイジメが始まり、どんどん居づらくなり、そこから数ヶ月で知人は退職することになりました。
もともと、本人も希望の部署ではなかったことや、その上司は問題も多かった人らしいです。
ですが、「職場がきつい」とか、「つらい」とか、「大変だ」、
という悩み相談は、上司批判、会社批判と捉えられる可能性があります。
こういった内容は、人事関係の人にのみ相談したほうがいいです。
とはいえ、人間関係を深めるには、相談しながら、あれこれ質問をするのがベスト。
ちょっとしたドジ話をしながら悩み相談をする、というパターンがいいのです。
●電話でのドジ話+悩み相談
「この前、電話を受けたら、年配の方で聞き取れなかったんで何度も名前を聞き返したら、社長だったんですよ!(笑)
そのことを隣の先輩に話したら、お前は自分の会社の社長の名前も知らんのか!と怒られちゃいました(笑)。
電話で聞き取れないときはどうされてますか?」
●飲み会でのドジ話+悩み相談
「私、お酒が弱いんですよ。電車で寝ちゃったら、家が川崎なのに、気がついたら小田原まで行っちゃって、タクシー代が大変なことになっちゃったんですよ。
どうしたら、寝過ごさないようにできますかね?」
●仕事での失敗話+悩み相談
「先月目標達成した!と思ったら、その後キャンセルが来てしまいまして、私の説明不足が原因だったんです。先輩はキャンセルの連絡がきたときには、どんなことをされてますか?」
以上のように、ドジ話や失敗した話をしてから、悩み相談をします。
すると相手がアドバイスがしやすくなり、相手がべらべらとしゃべってくれるようになります。
自分のプライベートなことや、悩みを話すことを心理学では「自己開示」と呼びます。
自己開示をすると、相手もそれに合わせて、自分の体験を話してくれる心理を「返報性の法則」といいます。
悩み相談がきっかけで、親密な関係が築けて、あなたの心強い応援者になってくれる可能性も広がります。
③影響を受けた本を質問する
自分より目上の人と話すときの、とっておきの質問を紹介します。
「影響を受けた本を教えていただけますか?」
それなりに成功している人は、たいてい読書家です。
どんな本を読んでいるのかを聴いて、教えてもらったらすぐに読みましょう。
そして、次回、会ったときに、感想を伝えます。
これで、相手のハートをガッチリつかめます。
あなたの熱烈な応援者になってくれる確率はグーンと高まるでしょう。
さいごに
運は人が運んできます。
ほんのちょっとした雑談が、あなたの人生を大きく変える出会いになるかもしれません。
自分の自己重要感を満たそうとするのではなく、
相手の自己重要感を先に満たすのです。
相手をいい気分にしながら、自分も大きく成長できて、さらに相手を応援者に変えていく。
この一石三鳥は、一生の財産になりますよ。